みなさん、先日のDWG vs G2のSemifinalはいかがでしたか。
筆者はG2を応援していたのと、PICK'EMもG2 winを予想していたのでショックが大きいです... 試合内容としてもGame2以外はDWGが圧倒してスノーボールを決めた印象が強く、個人的に面白くないので、今回の観戦日記は、シリーズを通したドラフトについて考える内容にしようと思います。
もう少し真面目な理由を挙げると、LJL韓国語通訳のスイニャンさん(@shuiniao)の、DWGのadc Ghostの試合後インタビューを日本語訳してくれたツイートによると、Ban Pickの段階でDWGがかなり上手くやっていたようです。
Ghost:2019年と2020年のDWGは全く別のチームと言っていいほど成長したと思う。G2はマップ全体を掌握して相手を揺さぶるプレイをよくするがそこだけ注意すれば勝てると話し合っていた。B/Pの過程でG2が慌てている感じが見えたのでB/P終わってこれはほぼ勝てると思ったし思い通りにプレイできたと思う。
— スイニャン (스이냥) (@shuiniao) 2020年10月24日
本記事では、G2の慌てている様子・DWGの自信をドラフトから読み解いていこうと思います。
シリーズを通したBanPickの一覧
今回のドラフト考察はGameごとに行うというよりも、本シリーズ全体を俯瞰してみようと思うので、先に4試合すべてのドラフトを載せます。この画像は、
LoL Esports VODs and Highlights - YouTubeにアップロードされている動画をスクリーンショットしたものです。左側がBlueチーム、右側がRedチームで、BanPickした順番のままの状態になっています。Game4はDWGがブラウム、G2がノーチラスをピックしています。
mid偏重のG2に対してバランスのいいDWGのピック
4試合のドラフトを並べてみると一見どちらも問題が無いように見えます。Game2のtop Fioraという現在のプロシーンでは珍しいピックがありましたが、それ以外のチャンピオンに関してはそれぞれゲームにおける役割を持つチャンピオンが揃っています。
そんな中、G2側で筆者が問題だったと考えるのが、ドラフトにおけるbotレーンの比重の軽さです。DWG側は現在adcのメタの頂点に位置するジン・アッシュのどちらかを3試合でピック出来ていますし、Game4に関しては両名がバンされたうえでレーンの主導権が取れるケイトリンをピックしています。
それに対して、G2はジン・アッシュを取ったのはGame3の一回のみです。他に取ったエズ・セナはスケーリングの点で評価が高いadcチャンピオンですが、ジンやアッシュ・ケイトリンに対してレーンコントロールが取れるチャンピオンではありません。G2の得意な展開がCapsのサイドレーンへのロームで、そのセットアップをするためにはサイドレーンの主導権を持つ必要があります。ピックの段階でbotレーンの主導権がない状況になってしまったのは、ローム先の選択肢がtopに限定されてしまったことになります。DWGのtopレーナ―が強力なNuguri選手であることも考えると、G2にとって非常に苦しい状況がドラフトの段階で既に出来上がっていたことになります。
このようなドラフトの展開になってしまったのは、DWG側がmidとtopのピックに関してG2よりも懐が深かったのが理由だと筆者は考えています。この2つの要因について、説明していきます。
midの懐が深いDWG
今回のシリーズは、midのCapsとShowmakerのマッチアップが重要になることは、過去の記事でも説明したので、今回の記事で省かせていただきます。気になる方は以下の記事をチェックしてください。
実際に、両チームがmidをフォーカスしていることは試合の序中盤の動きをみてもわかりますが、BanPickの段階でもそれが分かります。
まず、両チームともサイド選択権を持っているときに全てRedサイドを選択している点が特徴的ですね。
Worlds2020では、Patch10.19のメタを反映して、Blueチームはfirst pickでグレイブスなどのキャリーjgを取ることができ、Redチーム側はその次に残ったメタチャンプを2体ピックした上で、1st pick phaseの最後にBlueチーム側のチャンピオンに対してカウンターをピックするというのが、オーソドックスなドラフトの流れになっています。このセオリーを踏まえると、midを重視した両チームがRed側を選択するモチベーションは、自信のあるmidチャンピオンともう1体メタチャンプを最初に抑える、もしくは最初にmid以外のメタチャンプ2体を抑えて1st pick phaseの最後にmidのカウンターをピックする、という部分にあると推察されます。
実際に、Game2と3ではRedチームが先にmidチャンプを抑える自信ピックが見られています。Game2ではG2がCapsの得意なローム系チャンプ代表であるTFを先に抑えて、それに対してカウンターのサイラス(ultでTFについて行ける)をピックするという、オーソドックスな流れになっています。Game3ではShowmakerシンドラで序盤のレーン主導権は渡さないよというピックに対して、Capsはアカリを選択しています。グループステージでCapsはシンドラのカウンターにエコーを当てることが多かったと思いますが、試合後半にかけて失速するシンドラに対して、中盤以降影響力の出るアカリは悪くないピックだと思います。実際、グループステージのSuning戦でCapsのシンドラに対して、SuningのAngelがアカリをピックして、長い時間ゲームを支配していたこともありました。
ただ、Game3はもう少し別の意味も持ちます。Banのところに注目していただくと、サイラスがバンされてTFがオープンであることがわかります。なので、DWG側としては明確なカウンターがいない状況でTFをピック出来るタイミングでした。その上で、シンドラ先出が意味するDWGからのメッセージは、「Showmakerがシンドラで序盤のレーンをコントロールするから、CapsのTFは問題じゃないよ。TF開けるからピックしてごらん。」といったような感じではないでしょうか。
これと逆で似たような状況がGame1のドラフトでも発生していました。グループステージの上位チームの試合では必ずバンされてきたルシアンが開いて、Blue側のG2は当然1st pickでルシアンを取ります。ルシアンは序盤強力なチャンピオンとしてmidレーンのメタになっていて、ゲームでの役割はシンドラに近いです。DWG側はルシアンを開けてG2に渡したうえでTFをピックしています。つまり、ルシアンにレーンを支配されてTFがサイドレーンに影響を及ぼせない状況に陥らない自信がDWGにあったわけです。
また、Game1のドラフトには続きがあって、G2はTFについていくことを優先してサイラスをピックし、せっかくのルシアンをbotレーンにまわしています。G2がこのWorldsに向けて準備してきたCaps中心のスタイルにはこちらの方が適しているのかもしれませんが、ルシアンがスケーリングの点で現在のadcのメタではないことを考えると、少々歪んだドラフトになってしまった感が否めません。
チームとして準備してきたことはそれぞれ違うと思うので一概には言えませんが、Ban Pickにおいてmidのpickを柔軟に対応していたのはDWG側だったかな、という印象を持っています。
topの懐も深いDWG
ここまでmidに注目してドラフトの考察をしてきましたが、それだけでは冒頭に述べたようなbotに差が出るようなドラフトにはなりません。DWGも1st pick phaseでmidチャンピオンを必ずピックしているからです。ドラフトでDWG側に余裕をもたらしたのは、topのNuguri選手のチャンピオンプールの広さが決定的だったと思われます。
DWGのtopのpickは4試合全て2nd pick phaseで行われています。相手チームが1st pick phaseにtopチャンピオンを確定していた場合、カウンターを当てられるというメリットがありますが、大抵の場合2nd ban phaseでカウンターチャンピオンは消されることが多いですね。実際、どの試合でも、G2の2nd ban phaseで1体以上topチャンピオンがバンされています。
そのような状況下で、Nuguri選手には試合ごとに様々な役割を与えられています。Game1では相手の序盤強いレネクトンに対して、GPで安全にファームして後半に向けてスケーリングする役割。Game3では、サイオンに対してルルをピックし、レーンで快適にファームできないような厳しいハラスと、サポートとしてチームの集団戦を支える役割。Game4では、後半スケールするオーンに対して、セトで序盤からいじめていくキャリーの役割が求められています。それに対して、非常に高いレベルでNuguri選手は対応できています。Game2のフィオラのスプリットプッシュの役割に関しては結果的に上手くいかなかったが、対面がカミールで互角に近いマッチアップだったのと、サイドレーンに影響力の強いTFが相手にいる環境を考慮すると仕方がなかったように思えます。
このようにNuguri選手が2nd phaseにまわされても、期待された役割を遂行できるクオリティとチャンピオンプールの広さがあったおかげで、DWGは1st phaseにadcのメタを抑えることが可能になっていたのだと筆者は考えています。
余談ですが、個人的に、セトがtopで勝つのをプロシーンで見られて嬉しかったです。
最後に
ここまでドラフトを中心にSemifinal DWG vs G2を振り返ってみましたが、いかがだったでしょうか。観戦している最中にはわからなかったようなことも、記事を書く作業を通して気づくことができるのは、LoLのまた別の一面を知ることができたようで興味深かったです。
実際のゲームでは、たしか一回のピックに30秒という短い時間でドラフトが行われていて、特に筆者のようなLoL始めたてのかたには難しいかもしれませんが、少し思考を巡らせてみるとプロの試合の観戦がより面白くなるかもしれません。本記事が少しでも参考になれば幸いです。
これまでの観戦日記は以下のリンクから一覧が見れるので、併せて読んでいただけると嬉しいです!ぜひチェックお願いします!